2013年10月28日月曜日

かけ算とわり算について(2)

さて、今回はわり算について少し考えてみたいと思います。

前回(かけ算とわり算について(1)) では、かけ算について、同じ値の足し算をいくつも行うときに効率よくやるやり方、ということを説明しました。

ということは、同じ値の引き算について効率よくやるやり方、というのも当然、存在するはずです。もうおわかりだと思いますが、それがわり算ということになります。

つまり、120円のりんごを5個買うときの値段が600円なら、逆に、600円払ってりんごを5個購入したら一つあたりのりんごの値段はいくらになるかというと、当然120円だろう、ということを求めたい。しかし、引き算でいくつ買えるかということを求めようとすると、これは、600から、5を120回も引かないと(あるいは、5を120回、足し算をして600と釣り合うということを引き算をして確認しないと)いけないわけで、大変だいうことになるでしょう。おまけに600円と5個いうように単位も違いますしね。

すこしコンガラガってきましたが、こういう場合、我々はイメージでは、600というまとまりを5分割しようとかんがえたほうが想像しやすいですよね。では、その5分割したときの答えが120というまとまりになるということを求めようするとき、どうすれば、効率よくやれるか、ということの方法として確立されたのがわり算ということになるわけでしょう。

あなたのお子さんは本当に引き算ができますか(1)で説明した教科書からの例を再掲すると、


 57枚の折り紙があります。これを3人に分ける場合、

  1)10枚ずつの折り紙の束をひとつずつ3人に配る
  2)残りの10枚の束二つをばらばらにし、ばらばらになった折り紙27にする。
    その27枚の折り紙を3人にそれぞれ9枚ずつ配る


というように、まず、上の桁から割り算を行うと効率が良いということでした。これは、かけ算と同じように、引き算の繰り返しをわる数との九九で上の桁から比較(ここに引き算を用います)しながらやっていく方法です。

 だいたいのお子さんは、ここまで説明すると、一桁の数で割るわり算はすぐにできるようになります。

しかし、問題は、割る数が二桁以上になる場合です。なぜなら、二桁以上の数のかけ算の九九はふつうすべて覚えることは不可能ですから、そこで、試行錯誤が必要となるからです。

例を挙げて説明しましょう。

 ① 60÷30

という、二桁同士の数の比較的簡単なわり算を考えます。わり算になれている方なら、簡単に2という答えが出てきますが、初めてわり算を習う人には、ここは基本中の基本であっても大変難しい問題なのです。この場合、学校の授業では、

 60÷30

は、

 6÷3

と同じ、

ということから教わります。わる数とわられる数が同じ数で割れるときは、割って良いというのは、分数でも出てきますが、これを理解するところから始めて、10の倍数の場合はわる数を一桁にすると、九九が使えるようになり、そこで初めて、以前に習ったわり算と同じ問題になる、ということを、まず、理解しないといけません。

このようなことを理解して初めて、

 ② 72÷36

というような問題を、わる数とわられる数を四捨五入して
 
 ②’ 70÷40

のような問題として考え、さらに

 ②’’ 7÷4

として商の手がかり求めるという手順を踏みます。

ところが、7÷4の商は1ですが、もともとの問題は、72÷36ですので商は2ですよね。ここで、ならいたての小学生は、72÷36の商をはじめは1として72-(36x1)=36という計算をして、余り36などとそのまま答えてしまうのです。

つまり、かけ算までは、一回で正しい答えが出てきますが、わり算になると、先ほどもいいましたが、試行錯誤が必要となり、余りの36がわる数より大きいか等しいならば、商を増やさないといけないし、逆に0より小さくなるようならば商を減らさないといけない、というこれまでやったことのない方法を学ぶ必要があるということです。

※ さらに、わる数が14と15の場合、四捨五入なら14は10、15の場合20となり、わる数は実際1しか違わないのに、見当をつけるための数が2倍になってしまいます。見当をつける数が2倍違うということは、そのときの商と目安を付ける数がたとえば、60÷10=6ですし、60÷20=3と2倍も違って来るということになるのです。

このように、わり算を良く検討していくと様々な落とし穴があるために、つまづきやすいということが良く解ります。

私がこれまでいろいろ試した結果、効果があったことは、

 1.わり算を効率よくするために上の桁からするということを理解させるために、一度説明した後、わり算を行うときに実際どうするのか、ということを児童がこちらに説明する

ということをまず行い、わり算についての方法論を理解してもらいます。

しかし、試行錯誤が必要だということを、なかなか理解できないというお子さんもいらっしゃいます。その点については、

 2.いろんなパターンの問題がすでに教科書や参考書にあるので、それを繰り返しといてもらう

ということをいま行っているところです。

ほかによい方法などもきっとあるのだろうとは思うのですが、現在のところ、このような状況です。

本当にわり算というのは、かけ算、およその計算、分数の約分のようなことを理解していて、初めて商の見当がつき、さらにその見当をつけた商も必ずしも一度で決定できる正しさを持っていない、という大変さがあります。さらに、また、その試行錯誤の過程で、引き算も正しくできないといけない、という問題もあります。このように、大変なわり算。小学校4年生の秋から本格的に習いますが、抽象思考に対する発達の差やそれまでの学習に対する理解の程度、など、一様な学力を持っていないこともあり、つまづくお子さんは多いと思います。わり算に関しては、習いたてのお子さんには本当に大変だということをご理解いただき、丁寧なご指導を教育関係者並びにご家庭にお願いする次第です。

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